リーダーシップとは「指導力・統率力」などと表現され、組織の目標に向かって個人やチームを導いていく力のことです。指導力・統率力と聞けば、組織を牽引する役職者や部下を率いる上司が高めるべき資質やスキルだと考えられがちですが、リーダーシップは必ずしも役職者や上司のみに求められるスキルではありません。キャリア自律の面では、個人単位で行動管理し目標を達成する能力も必要な要素であり、組織の1人である一般社員においてもリーダーシップが求められている時代といえます。
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リーダーシップへの期待と課題
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株式会社ジェイックが2022年に実施したアンケート調査(ジェイック調べ)では、リーダーシップでの「期待する要素」と「課題を感じる要素」において下記の結果が出ています。
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●リーダーシップで期待する要素
1位:行動力____2位:決断力____3位:人材育成力
●リーダーシップで課題を感じる要素
1位:行動力____2位:コミュニケーション能力____3位:人材育成力
期待と課題=理想と現実の比較とも捉えられますが、実際の組織内ではリーダーシップにおいて「コミュニケーション能力」の不足を上げる回答が多いようです。さらに、各階層でのコミュニケーション能力の具体的な課題では下記の結果が出ています。
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●強化すべきコミュニケーション能力の要素
【若手層】1位:論理的表現力____2位:関係構築力____3位:傾聴力
【管理職層】1位:傾聴力____2位:説得力・影響力____3位:論理的表現力
【幹部・経営層】 1位:説得力・影響力____2位:傾聴力____3位:論理的表現力
階層別で強化すべきコミュニケーション能力の要素に違いがありますが、若手層においては「分かりやすく伝える」ための論理的表現力。管理職層においては「チームメンバーを理解し関係を作る」ための傾聴力。幹部・経営層においては、「組織を動かしていくための」説得力・影響力の強化を課題としています。
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行動力と決断力だけでチームを率いていくことには限界があります。リーダーシップを発揮するためには、チームの関係性を高めるための「聞く力・伝える力」が必要であり、チーム内の関係性があってこそメンバーを「突き動かす」ことにつながるのではないでしょうか。
出典:株式会社ジェイック「リーダーシップとコミュニケーション能力」に関するアンケート
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リーダーシップの誤解
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冒頭で、リーダーシップとは「導いていく力」であるとお話しましたが、導いていく力とは、影響を与え、協力を得る能力や行動のことです。リーダーシップは単に権力や地位に依存するものではなく、個人のスキルや行動、態度によっても左右されます。さらには、リーダーシップに関しては多くの誤解が存在します。よくあるリーダーシップの誤解を挙げてみます。
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1. リーダーシップには才能や個性が必要だという誤解
リーダーシップはスキルであり、訓練や経験を通じて発展させることが可能です。また、リーダーシップには多様なスタイルがあり、その効果はリーダーの才能や個性に依存しません。カリスマ的なリーダーもいれば、サポーティブなリーダーやリスニングリーダーもいます。自分のリーダーシップ能力を継続的に学び、向上させていくことが出来ます。
2. リーダーシップは権威や地位に基づくものだという誤解
リーダーシップは役職や地位に関係なく、誰でも発揮することができます。影響力や指導力は地位に関係なく、行動や人間関係を通じて示されます。責任感によって、リーダーは厳格で強権的であり、厳しい態度でメンバーを統制しなければならないといった解釈は禁物です。信頼と尊敬を基盤としたリーダーシップこそが、メンバーのモチベーションを高め、より良い成果を生み出します。
3. リーダーシップでは完璧なコントロールを求められるという誤解
リーダーシップにおいては、他人の知識やスキルを活用する能力が重要です。問題解決にはチーム全体の知恵と協力が必要です。使命感によって、リーダーは常に完璧でありミスを犯してはならず、すべての問題に対する判断をし、全てをコントロールするべきなのだ…と自分一人で暴走してしまっては周りはついていけません。たとえ完璧でなくても、自分の失敗を認め、自分自身やメンバーの特性を俯瞰したうえで調整していくことが結果的にチームとしての成長を得ることに繋がります。
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例えば、課を率いる課長に求められるリーダーシップで考えてみると、我の課についてこい!の精神ではなく、皆の課を一緒に変えていくよ!という巻き込む力が必要なのではないでしょうか。自分が任された課なのだから自分の支配下にあるんだ…というような自己中心的な解釈は改める必要があります。また、会社の指示だから…というような他人事な捉え方でも周りはついてきません。
効果的なリーダーは、メンバーからの信頼を得て、彼らが自発的に協力し、目標達成に向けて努力するよう導くことが求められるのです。