女性活躍推進の本質と課題|本当の目的を見据えた法改正と実態のギャップ

女性活躍推進法の本質と課題を掘り下げ、法改正の意図と実際のギャップに迫ります。企業の実態を反映した施策の必要性を探り、女性が働きやすい環境を作るための真のアプローチを考えます。

· 女性活躍推進,ダイバーシティ&インクルージョン,キャリア形成・キャリア支援,ワークライフバランス,組織変革・改革

女性の活躍を推進するための「女性活躍推進法」、女性が出産・育児の後も継続して働ける環境づくりを推進するための「育児・介護休業法」、そして、2022年から義務付けられた女性活躍に関する「人的資本情報の開示」。女性がより積極的に社会や職場で活躍できる環境を整える施策は必要ですが、女性に過度にフォーカスし、違和感や懐疑心が生まれている…ということはありませんか?さらには、「国の施策なのだから!」と本来の目的から逸れている可能性があるならば、女性活躍の本質に立ち返る必要があります。

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女性活躍推進をうんざりと感じさせる理由

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パーソル総合研究所が実施した「女性活躍推進に関する定量調査」では、女性活躍施策への懐疑心について男女共に「法律の改正に合わせて行っているだけ」という意見が上位を占めています。一方で、「女性活躍は自社には必要ない」という意見は低く、自社の女性活躍について「必要だとは思うが、自社のやり方は表面的で、効果が無い」と感じていることが読み取れます。

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女性活躍施策への懐疑心

・法律の改正に合わせて行っているだけ ・世間体を整えているだけ ・実際には効果が薄い

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女性活躍の推進についての意見

・「女性にばかり優しい制度ばかりつくるのはおかしい」という「逆差別」批判

・女性を無理やり管理職登用するのは「非実力主義」だという「優先登用」批判

・「女性管理職比率の数字合わせだ」という「非本質論」批判

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反対意見や抵抗勢力に目を向けろ!というわけではなく、雇用における男女差別があったからこそ「逆差別」という見方が生まれたことや、優秀ではない男性でも出世をさせ続けてきたことこそが「優先登用」だったということ、また、管理職を目指したい女性もいる中で現状(2022年時点)の女性管理職比率は12.7%という経緯等から目を背けることはできません。女性活躍推進に違和感や懐疑心を抱かせ、数字合わせで「非本質的」だと捉えさせているのは、女性本人の意思(キャリアへの展望)や、現場の声や実力評価を反映できていないということが原因なのではないでしょうか。

出典:株式会社パーソル総合研究所「蔓延する女性活躍への「懐疑」と「抵抗」」

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女性の管理職への昇進意欲の実態

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パーソル総合研究所が実施した「女性活躍推進に関する定量調査」によると、女性管理職比率が0~10%未満の企業は61.8%と過半数を占め、人事や経営層による解釈では「女性の昇進意欲が無い」ことを課題の上位として挙げています。

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女性管理職比率の課題と特徴

・女性の昇進意欲が無い

・十分な経験を持った女性が不足している

・登用要件を満たせる女性が少ない

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女性の管理職意向を高める人事施策(子あり/子なしで共通)

・労働時間の見直し ・管理職・登用の見直し ・男性の育休制度

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テレワークの働き方による管理職意向の影響

・男性の管理職意向が上昇したが女性の管理職意向は上昇せず

・子供を持つ女性のみにおいては、テレワーク実施率が高くなるほど残業時間が長い傾向

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テレワーク勤務やフレックス制度によって働き方が改善されたとしても、挑戦を加速させて仕事のギアを上げてしまうとバランスが崩れ管理職を簡単に目指す気になれない…。しかし、残業をしてでも今できることで貢献したいと踏ん張る…。このような、「意欲と歯止め」が絡まっているということはありませんか?女性の昇進意欲が無い…十分な経験を持った女性がいない…と「無い」ことを課題視しがちですが、まずなぜそうなっているか?を本人に聞いてみて下さい。実は「昇進意欲が無い」わけではないのかもしれません。

出典:株式会社パーソル総合研究所「女性活躍推進に関する定量調査」

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本当の意味での女性活躍とは

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女性活躍推進法は「働きたい女性が個性と能力を十分に発揮できる社会」の実現を目的とする法律です。2022年4月に法改正され、行動計画の策定や情報公表などの取り組み義務の対象が、常時雇用する労働者数301人以上から「101人以上」の事業主に拡大されました(100人以下の事業主は努力義務)。

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女性活躍推進法に基づく情報公開の基礎項目

・採用した労働者に占める女性労働者の割合(雇用管理区分ごとに公表)

・男女の平均継続勤務年数の差異(雇用管理区分ごとに公表)

・管理職に占める女性労働者の割合

・労働者の各月ごとの平均残業時間数等の労働時間の状況

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厚生労働省が発信している周知リーフレットには「早めに行動計画を策定するとメリットがあります」と、公共調達における加点評価や特別利率による資金融資を打ち出しています。また、公表を行わなかった場合、法的な罰則はありませんが、厚生労働大臣は当該事業主に対して報告を求め、助言・指導・勧告ができることとされ、従わなかったときは、その旨を公表することができます。もちろん、データをとり、効果を測定し、社内周知と外部公表を行っていくことで改善される課題もあるかと思います。こうでもしないと変わっていけないということもわかります。

しかしここで言う、「活躍の定義」は誰視点なのでしょうか

国にとっての女性の活躍、会社にとっての女性の活躍、そして女性本人にとっての活躍。それぞれに活躍の定義があります。そして、実際に働くのは本人であり、管理職を受けるか受けないかを決めるのも本人です。働く事を優先するのか、それとももっと大事なことがあるのかを決めるのも本人なのです。

「本人にとっての活躍」に耳を傾けないままでは本当の意味での女性活躍とは言えないのではないでしょうか。

出典:厚生労働省「令和4年4月1日から女性活躍推進法に基づく行動計画の策定・届出、情報公表が101人以上300人以下の中小企業にも義務化されます(周知リーフレット)」