ビジネスシーンで頻繁に使われる「責任感」とは、自分の役割や任務を全うし、その結果に責任を負う姿勢を指します。類似語として「使命感・正義感・義侠心・達成力」があり、これらは自己成長や他者支援の原動力となり、行動や動機づけに深く関わる概念です。特に若手社員の育成において、責任感の欠如を嘆く声が多く聞かれますが、否定するだけでは解決しません。責任感の必要性を理解し、仕事で重要視するためのアプローチを考えることが求められます。
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上司が抱える部下の課題 ‐責任感が最上位‐
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株式会社アトラシアンによる、上司からみた部下への本音に関する調査で、率いるチームの問題点として「「仕事に対する熱意・責任感の欠如」が最上位にあがっています。また、アデコ株式会社による、部下の評価で重要視する点の調査でも「責任感」が最上位です。このように、部下の責任感の有無に関して多くの上司が課題を感じていることがわかります。ただ、責任感と一言にいっても、ケースによっては様々な要素が含まれるのではないでしょうか。
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●上司が抱える部下の課題
・責任感がない
・やる気・意欲が無い
・指示待ち・受動的
・報連相がない
・勝手に判断してしまう
・謝らない・言い訳ばかり
・ミスが多い・直らない
・コミュニケーション能力に乏しい
・自信過剰
出典:株式会社ネクストレベル_ミライのお仕事「166人の上司が選んだ「こんな部下は困る!ランキング」発表」より
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上司が抱える部下の課題にあげられる「部下の責任感や意欲の欠如、指示待ちの姿勢」は、役割や目標の不明確さから生じることが多く、また「報連相やミスの多さ」はコミュニケーション不足やサポート体制の不備が影響しています。これらの課題を解決していくためには、まずは、部下の役割や期待される成果を明確にし、定期的なフィードバックを行うことが重要です。また、裁量を与え、責任を持たせることで主体性を促し、成功体験を積ませることが効果的です。
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上司と部下が互いに指摘 ‐行き違い‐
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責任感とは、自分の役割や任務を全うし、その結果に責任を負う姿勢であると冒頭で説明しましたが、「自分の役割や任務」が曖昧な場合はどうでしょうか。責任感を持って役割や任務を遂行しようとしても、取り組む内容が明確でなければ、責任感の定義も曖昧になってしまいます。これでは、「やっているつもり」「わかるはず」というような行き違いが生まれる要因になります。株式会社アトラシアンによる、上司の総合評価・部下の総合評価に関する調査では、まさにその相違が見て取れます。
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●上司が部下に求めること
・自己裁量の下、自律的に動ける
・自分のミッション、役割、ゴールに対する深い理解(★)
・仕事に対する熱意・責任感
●部下が上司に求めること
・自分の役割やゴールを自分の納得のいくかたちで明確にする(★)
・誰もが自由に意見・アイデア出しができる雰囲気作り
・自分の判断・能力を尊重・信頼する
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(★)の項目では上司部下間の意思疎通に行き違いがあることが見て取れます。上司は「ミッションや役割、ゴールに対する部下の理解が浅い」と嘆いている一方で、部下は「ミッションや役割、ゴールを明確に示してくれない」と嘆いている…。矢印が逆方向に向いている状態なのです。この要因を考えてみても、上司はきちんと示しているが、部下が理解できずにいるのか、上司の示し方が不足しているのか、どちらにしても意思疎通に問題があります。お互いが、役割や任務を明確にすることを望んでいるにも拘らず、「相手がしてくれない」で止まっているのです。責任感を持って役割や任務を遂行するためには、互いの認知状況や明確な役割やゴールを再確認する必要があります。そこからはじめて、結果に責任を負って取り組む姿勢が生まれるのではないでしょうか。
出典:アトラシアン株式会社_チームの教科書「390人の上司に聞いた!あなたの部下の総合評価-理想のチームとダメチーム。上司たちの判断基準」、「700人にホンネを聞いた!あなたの上司の総合評価-「理想の上司」と「ダメ上司」、社員たちの判断基準とは」
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責任感が強い社員・弱い社員 ‐対処法‐
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責任感の有無は、信頼性や評価、仕事や人間関係の成果に直接影響します。普段のビジネスシーンで考えてみても、責任感のある人に対しては、仕事を任せたいと思えますが、責任感が乏しい人に対しては、本当に任せて大丈夫だろうか…という不安が伴います。
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●責任感が強い社員の特徴
・仕事を最後までやり遂げようとする
・約束や時間を守る
・強い信念を持って自分の役割を全うする
●責任感が弱い社員の特徴
・当事者意識が低い
・ミスを人のせいにしたがる
・嫌なことから逃げがち
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●責任感が強い社員を育てる方法
・役割を与える
・社員に任せる内容を明確にする
・仕事の決定権を与える
出典:株式会社社員教育研究所「責任感が強い人と弱い人の特徴は?責任を持って仕事する部下の育成法」
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責任感が強い社員は、困難に直面しても諦めず、高い思考力や粘り強さを発揮します。責任感を育てるためには、役割や仕事の範囲を明確にし、裁量や決定権を与えて自ら考えさせることが重要です。責任感が乏しいと感じる部下に対しては、単に役割や任務を与え、できた・できなかったで評価するのではなく、「適切な役割」と「適切な仕事の範囲」を設定し、その部分を任せることから始めましょう。この「適切さ」は目標設定にも関わってきます。どのような役割なら能動的に取り組めるのか、どのような任務なら意欲を持てるのかを考慮し、部下の特性や目指すものと会社の要求をすり合わせることが大切です。このプロセスを通じて、任せる側と任される側双方に責任感が生まれ、相乗効果を発揮することが期待されます。