転職時代における企業の課題と離職防止策|社員のキャリア設計と方向性の一致方法

「転職時代における企業の課題と離職防止策」では、転職意向の高まりを背景に企業が直面する離職リスクに対処するための施策を紹介。社員一人ひとりのキャリア設計を支援し、働き方のバランスを取りながら、エンゲージメントを高める方法について詳述します。

· 転職・副業,離職防止,キャリア形成・キャリア支援,職場の人間関係,ワークライフバランス

採用難の昨今、離職に関する課題を抱えている企業も多いかと思います。終身雇用制度が崩壊し、転職は身近な選択肢であり、転職に対するイメージもネガティブではなくポジティブな印象を持つ方が増えています。今すぐ転職をしなくても今後の転職のために転職サービス会社に登録をしたり、仕事に対して常に改善や向上を求めることが当たり前になりつつあります。ワークライフバランスやキャリア自律が推奨される中で、「働く」ことへの捉え方も大きく変わっているのです。

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転職意向の動向

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株式会社リクルートが実施した、「就業者の転職や価値観等に関する実態調査2022」によると、正社員・正職員の20~50代就業者において、転職意向がある方は54.5%。そのうち現在転職活動中の方は20.0%を占めています。さらに、転職は未経験だが転職活動経験はある方の転職意向は9割近くにも上ぼります。

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今後の転職意向状況

【20代】

転職意向65.9% / 現在活動中29.1% / 転職活動開始から入社までの期間 3.5か月

【30代】

転職意向58.5% / 現在活動中22.1% / 転職活動開始から入社までの期間 3.6か月

【40代】

転職意向49.8% / 現在活動中15.8% / 転職活動開始から入社までの期間 4.1か月

【50代】

転職意向39.5% / 現在活動中10.1% / 転職活動開始から入社までの期間 4.2か月

出典:株式会社リクルート「就業者の転職や価値観等に関する実態 調査2022」より

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転職という選択肢がいかに身近であり、普段から転職の可能性を見据えている方が以外と多いことがわかります。

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転職理由と転職決定理由

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株式会社マイナビが実施した「転職動向調査2024年版(2023年実績)」によると、2023年の1年間における転職率は7.5%と過去最高数値結果です。また転職理由については、男性は「給与が低かった」、女性は「職場の人間関係が悪かった」がもっとも多く、転職先を決めた理由については、男女ともに「給与が良い」が最多ではありますが、プライベートとの両立を重視した理由を上げている回答も多くありました。

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転職率

7.5‘%

転職理由

・給与が低かった

・職場の人間関係が悪かった

・会社の将来性・安定性に不安があった

・仕事内容に不満があった

転職決定理由

・給与が良い

・休日や残業時間が適正範囲内で生活にゆとりができる

・希望の勤務地である

・新しいキャリア・スキルを身につけることが出来る

出典:株式会社マイナビが実施した「転職動向調査2024年版(2023年実績)」

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転職理由と転職決定理由、どちらも給与に関する理由が上位を占めていますが、ただ単に給与が低いだけの理由ではなく、適正な評価との連動や、仕事内容や役割に見合う給与という意味では、給与が理由に挙がる背景(課題)を検討する必要があります。また、転職決定理由で注目すべき点は、プライベートとの両立や今後のキャリアの成長が重要視されていることです。女性の社会進出や、男性の育児介入が当たり前になり、仕事に身を投じてひたすら生活のために働くというよりは、充実した生活のための手段として仕事を選ぶという傾向が見て取れるのではないでしょうか。

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転職すべきか残るべきか(会社ができること)

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転職は身近な選択肢である以上、隣り合わせにあるのは「離職」です。優秀な社員や、育成中の若手が離職してしまうことは、会社によって大きな痛手になることが予想できます。離職防止、エンゲージメントの向上など、様々な施策で対策を検討している企業も多いかと思いますが、多くの社員が転職を考えている状態だとして、転職ではなく在籍の会社でキャリアアップ・キャリア自律の判断を促すためには、各社員が「今の会社で将来を描くことが出来るキャリア設計」が肝になります。

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転職すべきか残るべきかの判断材料

・現職の満足度(人間関係・仕事内容・給料・待遇)

・自己成長の有無(知識や能力を高められる機会)

・ワークライフバランス(家庭・趣味・健康)

・スキルのマッチング(スキルを活かすためのキャリアアップ)

・転職への明確な動機(何を改善し何をしたいのか、はっきりとした理由)(★)

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前項でも紹介したように、転職意向のある方が約6割いる中で、転職に至る方は約1割弱。差分の5割の方に対して何ができるかが重要です。

転職理由は様々な内容が考えられますが、転職すべきか残るべきかを判断するためには、その判断を下す動機(★)があるはずです。不満はあるけれど、やりたいことがあるわけではない…、不安はあるけれど、転職判断に至るほどではない…、このように、そのうち辞めるつもりで様子見をしている状態は双方によって一番リスクが高いはずです。また、「こうあるべき」というような一方的な研修や施策で、個々の転職への動機にまで触れることができるでしょうか?

大切にすることや目指すものは皆違うからこそ、まずは、社員ひとりひとりの「ありたい姿」を確認をすることで向き合い、そしてそこに向かうことができるキャリア環境の相談や提示を個々に実施することが必要なのではないでしょうか。