「大人にはなりたくない」 子どもの一言が気づかせてくれた、背中で伝える働き方の意味。キャリア支援の視点から、誇れる仕事とは何かを問い直します。
今回のテーマは、「子どもにどう映っているかという視点で、自分の仕事や働き方を見つめ直すこと」。日々の忙しさのなかでは意識する機会が少ないかもしれませんが、私たちが見せている“背中”は、思った以上に多くのことを語っています。とある社労士さんとの何気ない会話から始まった気づきをきっかけに、自分自身の原体験や、今この瞬間に向き合っている仕事の意味を見つめ直す時間となりました。今回はそんな視点から、誇れるキャリアとは何か、少し立ち止まって考えてみたいと思います。
目次
- 「大人ってしんどそう」 子どもの言葉が突きつけた現実
- 地域のヒーローだった父と祖父の背中
- 「意味」を信じて働くという選択
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1. 「大人ってしんどそう」子どもの言葉が突きつけた現実
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先日、ある社労士さんとお話する機会がありました。その方は4人のお子さんがいらっしゃるのですが、お子さんが小学生だったころ、PTA活動に参加するようになった理由をこう語っていました。「我が子を4人も育ててもらったから、地域に何か恩返しがしたくて」と。そんな活動のなかで、お子さんとの間に交わされたある一言が、胸に刺さったと言います。
「大人にはなりたくない。だって、大人ってしんどそうだもん」
「うちのお父さんもお母さんも、仕事から帰ったら“しんどー!”って言って倒れ込んでるし」
その瞬間、「子どもが大人になりたくないと思ってしまう社会ではダメだ」と、心を揺さぶられたそうです。そして、本来の社労士業務に加えて、良い企業づくりを目指すための研究会を立ち上げられました。「大人って楽しそう」そう思ってもらえるような背中を、次の世代に見せられるか。この言葉は、私自身にも問いかけとして残りました。
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2. 地域のヒーローだった父と祖父の背中
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この話を聞いて、私自身の原体験も蘇ってきました。祖父は蒸気機関車(SL)の機関士で、父は郵便局員。どちらも地域のなかで誇りを持って働いていた姿が、記憶に残っています。
なかでも印象的なのは、父の幼少期のエピソード。学校帰りに友達と祖父が運転するSLが見える鉄橋まで行き、「うちのお父さんが、あのSLを運転してるんだよ!」と誇らしげに話していたそうです。子どもにとって、自分の親の仕事を“自慢できる存在”だと思えることは、何よりの自己肯定感につながるのかもしれません。
そして、私の地元は中山間地域で、郵便局はまさに“地域のライフライン”でした。中学生の頃、職場体験で郵便局を訪れた際、自転車で配達をする現場に同行させてもらいました。高齢者の多い地域で、配達のついでに声をかけてまわる郵便屋さんの存在は、「今日も来てくれてよかった」と人々から楽しみにされていたのです。
「配達するだけが仕事じゃないんだ」と語ってくれた郵便局員さんの言葉が、今も心に残っています。子どもながらに、「郵便屋さんは、地域を見守るヒーローなんだな」と思えたあの体験は、働くことの意義を教えてくれた原点のひとつです。
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3. 「意味」を信じて働くという選択
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今の私は、子どもから見たら何をしているのかよく分からない仕事をしていると思います(笑)まだ2歳の息子には「パソコンでずっとカチャカチャやってる人」くらいに映っているかもしれません。でも、それでも私はこの仕事に、強い誇りを持っています。
たとえば、高校時代の友人はゼネコンに勤務していて、全国を飛び回りながら道路や橋の建設に携わっています。たまに飲みに行くと、「あの○○に架かってる橋は、自分が施工管理したんだ!」と誇らしげに話す姿が印象的です。「地図に残るような仕事」って、こういうことなんだなと感じさせられます。子どもにも堂々と語れるその働き方に、素直に尊敬と羨ましさを感じます。
私の仕事は、目に見えて形に残るわけではありません。それでも、関わってくださる方に少しでも気づきやヒントを届けたいと、キーボードを叩き続けています。そして、そんな私の背中を支えてくれているのが、弊社の担当役員の言葉です。
「ビジネスとしての成功が第一じゃない。社会を変えるのが第一。結果は後からついてくる。だから、きっと大丈夫。」
この言葉に、何度も背中を押されてきました。目先の成果よりも、意味や意義を信じて動き続けること。その積み重ねが、やがて“誰かの記憶”に残る仕事になるかもしれません。
人生は、山登りのようなものです。登っている最中は景色なんて見えないけれど、ふと立ち止まって振り返ったときに、「こんなに登ってきたんだ」と気づける。今はその途中でも、ひとつひとつの足跡が、誰かの未来につながっていくと信じて、歩みを続けていきたいと思います。
エモリのつぶやき#7 は、ここまで。
子どもに「大人って楽しそう」と思ってもらえるような背中を見せること。それはきっと、私たち自身のキャリアにも“意味”をもたらす行為なのだと思います。あなたの働く毎日に、小さな誇りと希望が灯りますように。

「エモリのつぶやき」は、働く毎日の中でふと立ち止まった瞬間に浮かぶ気づきや発見を、
肩ひじ張らずに言葉にして届けるコラムです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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