人材育成において、上司・部下間をつなぐ1on1面談は欠かせません。多忙な日々の中でも放置してはいけない、重要な時間ではないでしょうか。評価面談や管理を目的にした場ではなく、部下がどういうキャリアを考えているのか、どういう悩みを持っているのか、普段は言いだしにくい話も含めて、部下の今の状態を聞き、その上で部下が明日からも頑張ろうと思える場であればいいですよね。定期的に1on1を実施することで、目標に向けたモチベーション、チーム内での役割や本人の意思確認、方向性のすり合わせ、評価における納得感などに繋がります。
しかし、1on1の目的とゴールが曖昧なままで実施してしまうと逆効果を生むこともあります。
・実施する意味があるのかな…と思わせるような「やらされている1on1」
・面談でのやりとりで受けるダメージが大きい…「苦痛な1on1」
・主役が逆転し部下は何も話せないまま終わる…「不完全燃焼な1on1」
こんなケースは思い当たりませんか?
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後回しのあげく形だけ
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多忙なミドルマネージャーにおいて、部下育成をないがしろにするつもりは無くても、結果的に部下との距離が開いている…その要因の一つとして、1on1面談の優先順位を下げてしまっていることはないでしょうか。
「ミドルマネージャーが忙しすぎる」という課題は、多くの企業でご相談をいただきます。
新規開拓…顧客対応…数字管理…人材育成…と、多くをミドルマネージャーに託している一方で、全てを担えていないことが課題なのであれば、会社側が役割の見直しをすることも必要かもしれません。
少なくとも、しわ寄せが1on1面談の優先順位に至った場合、未来を担うこれからの人材が一人辞めてしまうかもしれません。
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取り調べのごとく詰める
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ハラスメントの問題から「詰める」というスタイルもセンシティブな印象を受けるようになっていますが、それでもまだ、質問攻めという意味での取り調べ面談は顕在しているのではないでしょうか。
仕事の結果や取り組み状況に対して、良い方向に向かっていない場合、「なぜ?どうして?」の要因を確認することは必要です。しかし、「できていないこと・できなかったこと」に対して、責め続ける事は何の解決にもなりません。
それどころか、相手の自己肯定感を下げ、「できるように努めよう」という気持ちさえ奪ってしまいます。責める面談は、責める側の言い放ちの満足にしか過ぎず、解決に導く「育成」とはかけ離れていることを念頭に置く必要があります。
多くのことは、10になってはじめて「出来た」と認識されます。8まで出来ていても「出来た」とは数えてもらえません…。しかし、10にたどり着くためには、8までしか出来なかった場合、8まで出来たことを、まずはしっかり評価することが必要です。9.10の方法がわからないのであれば、出来る方法を一緒に探し、出来るようにサポートすることが育成です。
このように、相手の現状の課題を紐解き、サポートすることが人材育成面で求められる1on1面談ではないでしょうか。出来たことを認め、出来なかったことを前進させる、そのための「次の手を一緒に考える1on1」になればいいですね。
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武勇伝は響かない
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1on1面談に限らず、悩みごとがあるとき、相談をするとき、話を聞いてほしい時の”あるある”ですが、いつの間にか、話を聞いてあげる側が、自分の話ばかりしてしまう…ということはありませんか?どんな話題を出しても「私は」「俺は」と自分語りにすり替えてしまう…俗にいう「会話泥棒」。
上司と部下、すなわち評価者と批評価者の関係において考えてみると、1on1面談は、批評価者(本人)の目標設定・課題解決・行動転換について次に進めていくための場です。そこで、主役がすり替わってしまっては、本人にとって不完全燃焼で終わってしまいます。
例えば、苦手なことが克服できない、結果が出ない、うまくいかないという話題で、「いやいや、自分なんてもっと酷い状況下でやってきたよ…」と、聞く側が、自身の武勇伝を語っても、本人の悩みや課題の解決に直結はしません。
「こんなとき、こんな風に解決したよ…」と、経験に基づいてアドバイスをしたとしても、
本当にそれは「本人にとっての」解決策でしょうか?
そこから希望や粘りや前向きな気持ちを持ってほしいという意図があったとしても、
本当にそれは「本人にとって」刺さり・響く内容でしょうか?
経験談を話したい気持ちはわかりますが、1on1面談の場においては、相手の視点に立って進められる場になればいいですね。