人材育成の新しいアプローチ|キャリア自律と行動特性を活かした多様な育成方法

人材育成は、キャリア自律や多様な行動特性を理解し、社員一人ひとりの能力を引き出すことが重要です。企業成長のためには、旧来の一律育成ではなく、個人の特性を活かした新しいアプローチが求められます。

· 人材育成・社員教育,チームマネジメント,組織変革・改革,ダイバーシティ&インクルージョン,キャリア形成・キャリア支援

「人材育成」とは、企業の業績向上・成長・発展に必要な、求める人材へと成長するよう育成することを指し、企業の成長にとって人材育成は必要不可欠です。似た言葉として「人材開発」があります。狭義の意味では 「人材育成」は、所定の階層で一律のスキル習得を目指すこと。 「人材開発」は、社員個々がそれぞれの課題に対して自ら目標を設定しスキルや能力向上を目指すこと。そして、どちらも企業繁栄や経営目標に向けて成長していくための施策です。

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人材育成とキャリア自律

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最近では、エンゲージメント向上施策や自律型人材の促進が進んでおり、個人の人材開発こそが企業の成長にも繋がっていくという、相乗効果の考え方で、そのための「企業と社員の方向性の一致」や「自己理解」にも注目が集まっています。

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■人材育成のゴール

…一律のゴールを設定し、業務を進めるうえで必要なスキルの習得などを目指す

(職種や立場ごとの切り口で検討)

■人材開発のゴール

…一人ひとりゴール設定が異なり、個人のスキル・能力を向上させる

(本人の自発性を重視する)

(出典:パーソルホールディングス株式会社 記事「人材開発とは|意義や人材育成との違い、企業が取り組むべきポイント」より)

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昔前は、足並みを揃えて会社の期待する人材を生み出すアプローチが主流でしたが、最近では、社員個々がそれぞれの課題に対して自ら目標を設定しスキルや能力向上を目指す「キャリア自律」への転換も増えてきています。

個々の自律的キャリアの「その先に」会社が目指すものや求めることと「重なるポイント」があるという考え方です。

変化の激しい時代では、会社も変化し、個人も変化します。だからこそ、会社のレールに沿って一方的に求める人材を育成するのではなく、個々が「能力を発揮することができる組織の仕組み」の重要性が増しているのです。

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多様な人材の育成における課題

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厚生労働省が発表している、平成30年版「労働経済の分析」では、「多様な人材の能力発揮に課題がある企業」また「多様な人材の能力が十分に発揮されている企業」における、多様な人材の能力の発揮状況間のギャップについて下記の内容が上位に挙がっています。

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・上長等の育成能力や指導意識が不足している 24.8%

・人材育成を受ける従業員側の意欲が低い 22.3%

・社内で人材育成を積極的に行う雰囲気がない 20.0%

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冒頭で、人材育成と人材開発の違いについて説明しましたが、人材育成については企業の目標を達成することがゴールであるため、どうしても「やらされている感」や「自分にとって何のためにやっているのか」という心情になるケースも。意識の面では、

育成する側(指導者)と育成される側(学習者)両者に「意欲」が無ければ、育成する側の「指導スキル」も、育成させる側の「成長」も、期待する効果は得られません。

(出典:厚生労働省 平成30年版労働経済の分析「第二部 働き方の多様化に応じた人材育成の在り方について」より)

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行動特性をふまえた人材育成

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行動特性とは、個人が持つ行動原理やその背景となる考え方のことです。その人自身のルーツや生まれ育った環境によってその人の「特性」が培われ、同じ内容であっても感じ方や行動は違ってきます。人材育成においても、従業員一人ひとりが持つスキルや経験といった情報を、採用、育成、配置に活用し企業の成長につなげていく「タレントマネジメント」や、従業員一人ひとりが持つスキルや経験を最大限に活かし、目標を達成できるチームを作り上げる「チームビルディング」など、個々の特性を活かす育成マネジメント手法の取り組みが注目されています。

行動特性はさまざまな考え方によって分けられますが、有名な理論としては「DISK理論」があります。

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・主導(Dominance)型…思考が強いリーダータイプ

・感化(Influence)型…社交的なムードメーカータイプ

・安定(Steadiness)型…配慮ができるサポータータイプ

・慎重(Conscientiousness)型…データ主義なクールタイプ

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大きく上の4つのタイプに分類され、仕事主義なのか対人思考なのか、冷静なのか楽観的なのか、ペースが速い遅いなど、人が持つ特性によって行動が変わってきます。ここで重要なのは、いくら部下の特性を把握したとしても、自分の特性を理解しないままでは、自分にとっての「当たり前」や「こうあるべき」など価値観の相違に気付けないということ。

育成する側(指導者)と育成される側(学習者)それぞれの「特性」を認識してはじめて、響くそして届く「育成アプローチ」ができるのではないでしょうか。