企業や組織に依存するのではなく、個人が主体的に自身のキャリアについて向き合う「キャリア自律」。昨今、自律型人材の重要性や、キャリア自律の必要性は、大きく取り上げられていますが、果たして、社員(働く本人)自身は、このキャリア自律をどのように捉えているのでしょうか。
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社員が捉える「キャリア自律」とは
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リクルートマネジメントソリューションズが、若手・中堅の会社勤務正社員に対して実施した「キャリア形成に関する意識調査」で、キャリア自律に対する捉え方および認識においては、下記の回答が上位となっています。
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・自己責任
・自己決定
・働き方の選択
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他にも、「成長機会」や「主体的取組み」といった内容の回答はあるものの、「自己責任」や「自己決定」という回答に対しては差をつけており、組織側に、「キャリア自律によって成長と主体性を加速させ、自社での活躍を切り開いていってほしい」という想いがあったとしても、自律=責任という現実的な解釈から、そう簡単にキャリア自律の「いいとこどり」はできないのではないでしょうか。
出典:株式会社リクルート・マネジメント・ソリューションズ「若手・中堅社員の自律的・主体的なキャリア形成に関する意識調査」2021年
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属性別にみるキャリア自律の実態
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パーソル総合研究所が、20代~50代の正社員に対して実施した「従業員のキャリア自律に関する定量調査」によると、キャリア自律の度合いは、男女ともに20代をピークに40代にかけて低下しています。このほか、従業員規模では2000人以上の大きな組織では高く、100人以上の小さな組織では低い傾向。年収別においては、年収の額にキャリア自律の度合いが比例しています。職種においても下記のような傾向があるのです。
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キャリア自律度が高い職種:
サービス職、商品開発・研究職、間接部門職、営業・販売職、専門・技術職など
キャリア自律度が低い職種:
生産工程・管理・製造、配送・物流・運輸職、事務職など
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この分析結果を算出している心理要素は、「職業的自己イメージの明確さ・主体的キャリア形成意欲・キャリアの自己責任自覚」、行動要素は、「職場環境変化への適応行動・キャリア開発行動・ネットワーク行動・主体的仕事行動」が尺度となっており、年齢や職種によって、心理・行動要素まで検討したアプローチの方法が必要であることがわかります。
出典:株式会社パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査」2021年
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会社と社員が共に納得できるキャリア自律
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組織を繁栄させ変化していくための施策として、いくら「キャリア自律は必要だ。一人一人の主体性と成長で会社を良くしよう~」と打ち出しても、社員側からすると「なぜ?会社はそうして欲しいのだろうけど、必要性が腑に落ちない」または、「このご時世だから必要性は感じる。だからこそ自律して転職できる準備をしなければ…」と、会社の思惑に反した解釈になってしまうケースもあるのではないでしょうか。
ここで重要なのは、「会社と社員が共に納得できる」という点なのです。
パーソル総合研究所による「従業員のキャリア自律にプラスの影響が見られた促進要因」では下記が挙げられています。
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企業の人事管理の面でのキャリア自律度を高める要因は、
・組織目標と個人目標の関連性
・ポジションの透明性
・キャリア意思の表明機会
・処遇の透明性
現場における上司のマネジメントの面におけるキャリア自律度を高める要因は、
・期待感の伝達
・ビジョン共有
・理解とフィードバック
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会社と社員の方向性(目標の関連性)が不明確・不一致のままでは、会社と社員が共に納得できるキャリア自律の促進は困難です。まずは、どこに向かっているかの確認、どのようなキャリアを目指しているかの共有、そして、お互いの方向性が重なる先にあるものは何かを明確にするべきではないでしょうか。
出典:株式会社パーソル総合研究所「従業員のキャリア自律に関する定量調査」2021年