「なぜこの部署?」「なぜこの上司?」そんな問いに意味を見出すことが、キャリア自律の第一歩です。スヌーピーの一言をきっかけに、意味づけの力と育成のヒントを考えます。
今回のテーマは、「意味づけの力」とキャリア自律の関係です。スヌーピーのひと言をきっかけに、自分に与えられたカードをどう捉え直すか、という視点でキャリアの歩み方を考えてみました。思い通りにならない配属、合わない上司、つらい職場環境…。そんな「望まぬ状況」に置かれたとき、人はどう意味づければ前に進めるのか。自分自身の体験を交えながら、育成のあり方や周囲の関わりについても綴っていきます。
目次
- スヌーピーの言葉に教えられたこと
- なぜこのカード?から始まるリフレーミング
- 意味を一緒につくるという関わり
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1. スヌーピーの言葉に教えられたこと
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「You play with the cardsyou’re dealt… whatever that means.」
配られたカードで勝負するっきゃないのさ。それがどういう意味であれ。※漫画『ピーナッツ(Peanuts)』より、スヌーピーのセリフ(作:Charles M. Schulz)より
漫画『ピーナッツ』の中で、ルーシーに「どうして“ただの犬”でいられるの?」と聞かれたスヌーピーが返したこの一言。たまたま目にしたセリフでしたが、妙に心に刺さりました。なんとも達観したセリフですが、本当にそう思えるようになるには、やっぱり「納得のいかないカードの配られ方」を、どうにかこうにか自分で意味づけてきた経験が必要なのではないか…。そう感じたのです。
現実には、自分の希望通りの配属や上司、環境ばかりではありません。それでも、「このカードでどう勝負するか?」を考え続けた先に、自分なりの選択肢や可能性が見えてくる瞬間がある。あのスヌーピーの一言には、そんな“意味づけの力”へのヒントが詰まっているように思います。
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2. なぜこのカード?から始まるリフレーミング
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「もっとお金持ちの家に生まれたかった」と、 子供の頃によく口にしては、よく両親にたしなめられていました。「なんで自分はこのカードなんだ?」という思いは、大人になってからも、ふとした瞬間に顔を出します。
・希望の部署じゃなかった
・上司と合わない
・過酷な環境に放り込まれた
そんな経験、誰しも一度はあるのではないでしょうか。私にとっての大きな試練は、新卒で配属された先にいた、超絶パワハラ上司との出会いでした。先輩方がメンタル不調により休職したり、退職していく中、「こんな上司の下に配属されるなんて自分には運がない」と思っていました。でもある時、「この人を攻略すれば、これから先、これ以上の人は出てこない。だから鍛えておこう」と思考を切り替えました。ある人から言われた、「親と上司は選べない」という言葉から「配られたカードで勝負するっきゃない」と思ったのです。
すると冷静に観察し、戦略的に関わる視点が持てるようになり、やがて他の社員から「どうやってうまくやってるの?」と聞かれるまでに。そして、リフレーミングの力が少しずつ自分の中に育ってくると、「恵まれたカード」も見えてくるようになりました。振り返れば、あの逆境が、自分のしなやかさや強さを育ててくれたように思います。
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3. 意味を一緒につくるという関わり
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誰もが最初から理想のカードを手にしているわけではありません。だからこそ、「今あるカード」にどう意味を持たせるかが、その人のキャリアの礎になるのだと思います。ある企業の人事担当者がこんな話をしてくれました。「新入社員にはあえて希望とは違う部署に配属する。さまざまな経験を積んでほしいから。でも、その経験に意味を見出す支援まではできていない。そこは現場任せになっている」と。実際、現場が忙しいのは事実です。それでも、「与えられたこのカードをどう活かそうか?」と一緒に考える関わりがあれば、その経験は大きな財産になるはずです。
「この部署に行けば将来こうなるから」「とりあえず3年頑張れ」 そんな説明だけでは、人はなかなか前に進めません。これからの人材育成に必要なのは、“意味を一緒につくっていく”こと。意味づけは、自分ひとりで完結するものではなく、対話や関係性の中で育っていくものだからです。配られたカードは変えられないかもしれない。でも、どんな意味を持たせるかは自分次第。そして「誰とカードを見るか」もまた大切な要素です。意味づけの力が育ってくると、
「なんでこんな研修受けなきゃいけないんだ。ただでさえ忙しいのに…」
という不満が
「一見つまらなさそうな研修だけど、この機会を○○に活かそう!絶対役立ててやる!」
という視点に変わり、
「なんでこんなことを言われないといけないのか…」
という苛立ちも、
「腹は立つけど、こういうことに活かせるな」
と受け止め直せるようになっていきます。
こうした前向きなリフレーミングを可能にするには、自身の発想の転換はもちろんですが、周囲の支援の姿勢が欠かせません。私はたまたま周囲の人々に恵まれたので、前向きなリフレーミングができましたが、「たまたま」に任せせず、「意味づけの力」を育てる関わり方を、もっと意識的に設計していくこと。それこそが、これからの人材育成やキャリア支援の本質ではないでしょうか。
エモリのつぶやき#5 は、ここまで。
スヌーピーの一言に背中を押されて、自分のカードを見つめ直す時間になりました。
意味づけの力は、自分自身の捉え方次第。そして、周囲の一言や関わり方が、その力を育てる大きなきっかけになります。あなたの働く毎日に、小さな問いと視点の変化が届いていたなら、うれしく思います。

「エモリのつぶやき」は、働く毎日の中でふと立ち止まった瞬間に浮かぶ気づきや発見を、
肩ひじ張らずに言葉にして届けるコラムです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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