今回のテーマは、「オーナーシップをどう育てるか」。職場では「もっと主体的に動いてほしい」「当事者意識が足りない」といった声があがる一方で、部下は「言われたからやっている」「怒られるからやるしかない」と、気持ちが乗らないまま業務に向き合っていることも少なくありません。やらされ感が漂う中で、本当の意味での“自分事化”は生まれるのでしょうか? 4コマ漫画を通して、職場でよくあるすれ違いや、オーナーシップを引き出す関わり方のヒントを探っていきます。
目次
1. やらされ感が人を止める
2. 4コマ漫画「やらされ感と自分事」
3. <考察1>必要性のない仕事に気持ちは動かない
4. <考察2>「わたしならこうしたい」が起点になる
5. サンボンガワが読み解く「オーナーシップ」とは
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1. やらされ感が人を止める
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上司の言葉は正論でも、部下の心には届かないことがあります。「やるしかない」と思いながら取り組む仕事には、どこか冷めた気持ちがつきまとい、行動が表面的になりがちです。やらされ感で動く人には、責任感も創意工夫も育ちにくい。逆に、「自分にとって必要だ」「意味がある」と感じられた瞬間、人は驚くほどの集中力とエネルギーを発揮します。
このように、“自分のこと”として業務に向き合える感覚こそが、オーナーシップ(=当事者意識・主体的な責任感)のはじまりです。主体性やオーナーシップは、上司が指示しただけでは育たないもの。まずは、「どうしたら自分ごとになるか」という視点で、関わり方を見直す必要があります。
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2. 4コマ漫画「やらされ感と自分事」
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3. <考察1>必要性のない仕事に気持ちは動かない
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「営業アクションできないなら、どうやったら興味持ってもらえるか考えてよ」という上司の言葉に、「営業したくてこの会社に入ったんじゃないよ…」と、心の中でつぶやく部下。
この漫画の冒頭は、上司の正論と、部下の“やらされ感”のズレから始まります。上司は結果を求め、部下は義務感で動いている。そこには、“自分ごと”の不在が色濃く表れています。たしかに、「やれと言われたからやる」「怒られたくないからやる」では、気持ちは入りません。やらされ感がある限り、行動は受動的で、創意工夫も生まれにくいものです。
一方、2コマ目では「でも、興味は持ってほしい」という、相手を想う声が描かれます。これは単なる拒否ではなく、「意味を感じたい」「何かに結びつけたい」という前向きなサインとも受け取れます。では、どうすれば“自分ごと”として意味を感じられるのでしょうか。ポイントは、その仕事が「自分とどう関わるか」を見出せるかにあります。
漫画の3コマ目では、「よくある企画じゃ私なら興味湧かないもんな」と、視点を、相手基準から自分基準に切り替えはじめる様子が描かれます。「もっと○○したい」「私ならこう工夫するかも」と思えた瞬間、人は自然と前のめりになっていくのです。ここで大切なのは、必要性=「自分にとって得かどうか」ではないということ。たとえば、「困っている誰かの力になれる」「自分の価値観に合っている」「面白そうでワクワクする」といった要素があるかどうか。つまり、必要性とは納得感や価値観との結びつきであり、それを感じられるかが“自分ごと化”の鍵になります。
「この仕事は、自分にとって意味のある行動だ」と思える。その接点が見つかったとき、他人事だった仕事が、自分の言葉と動機で動かせる“自分ごと”へと変わっていくのです。
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4. <考察2>「わたしならこうしたい」が起点になる
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4コマ漫画の後半では、主人公がふと気づきます。「よくある企画じゃ、私なら興味湧かないもんな」と自分の視点に立ち返る場面があります。この気づきは、誰かに言われたからではなく、自分の内側から生まれたもの。ここから、「じゃあ、どうすれば興味を持ってもらえるんだろう?」という思考が芽生え、行動の主体が上司から自分へと移っていきます。
オーナーシップの起点は、こうした“わたしなりに考える”視点にあります。企画を任されたとき、トレンドや、正解とされる型をそのまま正とし、疑問をもたずに進めるよりも、「自分なら何が面白いか」「誰に、どう伝えたいか」と問い直せたとき、人はぐっとクリエイティブになれるのです。
業務を自分事に変えるためには、押しつけではなく余白が必要です。「どうしたい?」と尋ねること。少し任せてみること。自分なりの意味や仮説を持って動き出せる環境があると、「もっとこうしたい」という前向きな意欲が育つのではないでしょうか。もちろん、自分の視点にこだわりすぎて、独りよがりになってはいけません。リサーチや比較、チームとの対話によって、より良いものが生まれるのも事実です。しかし、その起点となるのは、やはり「自分はこう思う」という意思や関心。意欲がなければ、疑問も改善も生まれません。自分の内から湧き出る問いこそが、オーナーシップの本質なのです。
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5. サンボンガワが読み解く「オーナーシップ」とは
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部下が動かないとき、私たちはつい「やる気がない」と決めつけてしまいがちです。でも、それって本当に、意欲がないからなのでしょうか?納得できないまま動いている違和感によって、気持ちが低モードになっているだけではないでしょうか。
やらされているうちは、行動は止まりがちです。そして、主体性とは、与えるものではなく、生まれるもの。責任感や使命感が“自走力”として立ち上がるためには、その仕事に対して「自分なりの意味」や「必要性」を見出せることが前提になります。さらにその一歩先、「もっとこうしたい」「自分だったらこう工夫するかも」といったプラスαの創意を引き出すためには、その仕事や役割のなかに「自分がどう関われるのか」を具体的にイメージできる、“自分ごと”の感覚が欠かせません。そもそも、自分がその舞台に立っているイメージが持てなければ、そこに力を注ぐことすらできないのです。
また、もし、部下のオーナーシップの欠如に課題感じている管理職としてこのコラムを読んでくださっている方がいるなら、まずはぜひ、「部下を育てる自分自身のオーナーシップはどうか?」と、自分自身のオーナーシップへの問いを置いてみてください。「会社に言われたから」「育成は上司の役割だから」 そう思っているとしたら、そのなかに、無自覚な“やらされ感”は潜んでいないでしょうか?
「部下が納得してくれたら…」「共感してくれたら…」と願う前に、まずは自分自身が何を大切にし、どんなチームをつくりたいのかを、言葉にしてみる。自分はどんな想いを持っていて、それを一緒に形にしていけるメンバーと、どんな未来を描きたいのか。そして、そのために今、自分は何ができるかを考える。そんな、自分の言葉で語られた「ありたい姿」や「願い」があってこそ、関わる相手(例えば部下やチーム)のオーナーシップも、引き出されていくのではないでしょうか。
4コマ革命#5は、ここまで。
次回以降も、4コマ漫画「はたらくわたし」を通じて、職場に潜むリアルな違和感と、その背景にある本質を考えていきます。

「4コマ革命」は、職場の“あるある”を起点に
その背後に潜む本質を描き出すコラムシリーズです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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