スペックや志望動機だけでの採用に限界を感じたことはありませんか?いま、注目されるのは“言葉にならないフィーリング”。社歌による採用マッチング事例から、非言語情報の活用について考えます。
今回のテーマは、「非言語情報が採用マッチングに与える可能性」について。ある採用支援会社さんとの情報交換の中で飛び出した、“社歌”による一次選考の話題がとても興味深く、思わず深掘りしてしまいました。言語情報が中心になりがちな採用活動において、あえて「雰囲気」や「フィーリング」といった言葉にならない感覚を大事にしてみる。そのアプローチが、意外にも「定着」や「活躍」につながるかもしれない…。そんな可能性について、ざっくばらんにお話しします。
目次
- 社歌でマッチング?採用の一次フィルターに非言語を活用
- 「幸福」と「幸せ」の違いが示す、言語のあいまいさ
- 言葉では測れない“感覚的なフィット感”をどう扱うか
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 社歌でマッチング?採用の一次フィルターに非言語を活用
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ある採用支援会社の社長が語っていたのは、「社歌」でマッチングを図るというユニークな試み。スペックや志望動機などの「言語情報」だけでは測れない「フィーリング」を重視したいという狙いから、一次選考に自社の社歌を活用することにしたのだそうです。
その社歌は、社長の音楽の好みを反映して制作されたオリジナル。応募者がその曲を「いいな」と思えるかどうかで、カルチャーフィットの第一歩を判断する仕組みです。言葉では伝えきれない空気感や感性の一致が、実は「定着」や「活躍」に結びつくのでは?という仮説は、従来の採用観を揺さぶるものとして非常に示唆に富んでいます。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2. 「幸福」と「幸せ」の違いが示す、言語のあいまいさ
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
この会社が非言語に注目した背景には、「言語情報のあいまいさ」があります。
たとえば「幸福」と「幸せ」という似た言葉も、辞書で見るとニュアンスが違います。前者は「満ち足りた状態」、後者は「運のよさ」。同じように使われる言葉でも、受け取り方によって大きくズレが生じるのです。つまり、「幸福」は“happy”に近く、「幸せ」は“lucky”に近い。こんな微妙な違いを意識して使い分けている人は、そう多くないのではないでしょうか。
同じように、経営理念やMVV(Mission, Vision, Value)なども、いくら言語化されていても、受け取り方にはズレが生じることがあります。その一方で、音楽のような「非言語情報」には、もっと直感的にオリジナリティが表れます。
“なんかこの曲調、好きだな”という感覚で「雰囲気」が伝わる。それこそが、言葉にはできない価値であり、応募者と企業の間にある“肌感覚の相性”を可視化する手がかりになるのです。
社歌というユニークな切り口ではありますが、こうした取り組みも、非言語情報を採用に活かす一つの興味深いアプローチだと感じました。「言葉では伝えきれない何か」をどう見つけ、どう活かすか。その視点に、これからの採用のヒントが隠れているのかもしれません。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3. 言葉では測れない“感覚的なフィット感”をどう扱うか
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
書類や面接のやり取りだけでは測りきれない、フィーリングや空気感。
「この人は、自社の価値観や文化とフィットしそうか?」という視点は、すでに多くの採用担当者にとって重要な見極めポイントになっているのではないでしょうか。特に近年は、スキルや志望動機といった言語情報だけでなく、「雰囲気が合いそうか」「一緒に働きたいと感じるか」といった非言語の印象も、選考の判断材料として重視されつつあります。
たとえば表情、声のトーン、話すテンポ、感性。
そういった非言語情報にこそ、入社後の定着や活躍のヒントが隠れているという考え方は、少しずつ注目を集めています。こうした仮説のもと、非言語による相性の判断に戦略的なウエイトを置こうとする企業も出てきているようです。
といいつつも最後にお伝えしたいのは、この判断軸がすべてではないということです。
私自身、日常生活で思い当たることがありました。たとえば妻とは音楽の好みがまったく合いません。家でも車でも、選曲がかみ合わないことはよくあります。そんな私のことを、妻は「まるで別の惑星から来た人」と評しますが、それでも仲良くやっています。(やっているつもりです…)。そんな経験からも、「相性」や「フィット感」は、必ずしも測れないとも感じます。マッチングは単純な一致だけで語れない奥深さがありますね。
この試みがどういう結果になるのか、とても興味津々です。話が聞けたらここでご紹介しますね。
エモリのつぶやき#6 は、ここまで。
採用という“出会い”の場において、非言語でのコミュニケーションを意識してみることで、これまでとは違ったマッチングの可能性が見えてくるかもしれません。あなたの働く毎日に、ささやかな視点の変化を届けられたなら嬉しいです。

「エモリのつぶやき」は、働く毎日の中でふと立ち止まった瞬間に浮かぶ気づきや発見を、
肩ひじ張らずに言葉にして届けるコラムです。
―――――――――――――――――――――
企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
―――――――――――――――――――――
『SIMBA UNIVERSITY』は、キャリアを進むすべての人のためのWebメディアです。キャリア支援に役立つ実践ガイド記事や導入事例、価値観診断ツールなど、現場に寄り添うコンテンツを通じて、キャリアの迷いや選択に向き合うヒントをお届けしています。
当社では、個人が描くキャリアの方向性と、組織のビジョンを重ね合わせるアプローチとして、「クロスキャリア・マネジメント」を提唱しています。また、社員一人ひとりが自分らしさを活かしながら、価値観や“ありたい姿”を言語化し、主体的にキャリアを描いていくためのキャリア開発プログラム、「じぶん戦略」もご提供しております。組織と個人が、ともに成長し合える関係づくりにご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。