女性活躍が「管理職比率30%」の数字合わせになり、本人の意思が置き去りに。やらされ感を 解きほぐし、会社が求める活躍と本人が描く真の女性活躍の意味を考えます。
今回のテーマは「女性活躍」。国を挙げて推進される施策は、少子高齢化や人材不足の解決策として注目を集めています。しかし、管理職比率の数値目標が先行する一方で、現場では「希望していない登用」「PRのための露出」など、本人の思いと制度の目的が食い違う場面が生まれています。女性本人の意思やキャリア観が軽視され、施策が目的化してしまうと、かえって逆効果になりかねません。4コマ漫画を通して、職場でよくある違和感を掘り下げ、「女性活躍」とは何か、その本質を探っていきます。
目次
- 女性活躍推進が掲げる理想と現実
- 4コマ漫画「何のための女性活躍推進?」
- <考察1>管理職登用がゴール化するリスク
- <考察2>本人が描くキャリアとのズレ
- サンボンガワが読み解く「女性活躍」とは
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1. 女性活躍推進が掲げる理想と現実
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政府や企業が掲げる「女性活躍推進」は、少子高齢化や人材不足といった社会課題に対処するための重要な施策です。管理職比率の向上や働き方改革、育児・介護との両立支援など、多くの取り組みが進められてきました。
その背景には「女性が排除されてきた時代を乗り越え、対等な立場で活躍できる社会を実現する」という理念があります。
しかし現場の声に目を向けると、「活躍=管理職」という図式に違和感を持つ女性は少なくありません。管理職を希望しない女性に対しても登用を強いるような風潮が広がると、「自分のキャリアを選ぶ自由」が損なわれてしまいます。結果として、施策そのものが形骸化し、「女性活躍」が目的化してしまうリスクがあるのです。
本当に大切なのは、女性一人ひとりが「自分にとっての活躍」を描けるように支援することではないでしょうか。
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2. 4コマ漫画「何のための女性活躍推進?」
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3. <考察1>管理職登用がゴール化するリスク
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「女性管理職比率を上げる」という目標は社会に向けて分かりやすい一方で、ゴールが「登用そのもの」にすり替わる危険があります。実際のキャリア志向は多様であり、必ずしも管理職が「成功の証」ではありません。
漫画では、望んでいない役割を押し付けられた戸惑いや、「責任者ですよね?ちゃんと指示して下さい」とリーダーの役割を遂行するよう求められる場面が描かれます。さらに、あからさまに「イメージアップだからSNSに上げて」と本人の意思に関係なく発信材料として扱われる場面は、成長や意欲が置き去りにされ、会社起点の“見せかけの活躍”に矮小化されてしまう構造を示しています。
形式的な成果を優先するあまり、本人の意思に基づいたキャリアが置き去りにされれば、モチベーション低下や組織への不信感を招きかねません。本当に必要なのは、環境整備や支援を通じて、自然に「挑戦してみたい」と思える状況をつくること。
本人にとっての活躍を考えないと始まらないのです。
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4. <考察2>本人が描くキャリアとのズレ
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漫画のラストでは「本当の活躍から遠ざかってる」というフレーズが問題提起されていますが、「私が目指す活躍じゃない」という本人の本音こそが核心を突いています。ここには、組織が期待する活躍の形と、本人が思い描くキャリアとの間に横たわるズレが端的に示されています。
同時に浮かび上がるのは、本人自身が「自分にとっての活躍」をどこまで明確に描けているのかという課題です。組織の押し付けが違和感を生むのと同じように、本人が自分なりのキャリア像を言語化できなければ、ズレを埋める対話も始まりません。
施策の是非を議論するだけではなく、組織と本人の両者が「活躍とは何か」を語り合える場を持つこと。その対話こそが、女性活躍を数字合わせではなく、本人起点のキャリア形成につなげていく第一歩となるのです。
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5. サンボンガワが読み解く「女性活躍」とは
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かつては「管理職になりたくても女性には目指せない」「女性だから認めてもらえない」という時代がありました。差別や色眼鏡は当然なくすべきです。しかしその一方で、「女性だから」という理由だけで登用されたのでは、と受け取られてしまうこともあり、本人の自律性を損なう場面もあります。
大切なのは、実力主義と適材適所の原則を守りつつ、多様な活躍の形を認めることです。管理職を目指す女性が正当に評価される環境を整えると同時に、別の道を選ぶ女性も尊重されるべきです。そのためにも、まず会社ができるのは、本人の声に耳を傾ける対話の場を持つことです。「輝く女性」とは、自らの意思でキャリアを選び、その道を歩む人を指すのだと思います。
私自身、育児との両立に苦戦した経験があります。時短勤務を選んだとき、責任ある仕事を任されにくかったり、「ここぞ」という場面で挑戦を逃したりしたこともありました。自信を持ちきれず一歩を踏み出せなかったことが、結果的にキャリアの幅を狭めてしまったのです。だからこそ、時短でも正当に評価され、ライフステージに左右されず挑戦できる仕組みが欠かせません。そうした環境づくりこそが、本当の意味での女性活躍を支えるのです。
そして最後に、自分らしい活躍を模索している女性に伝えたいのは――妥協や諦めではなく、意志を持って選び取ったキャリアこそが本当の活躍だということです。挑戦する勇気も、仕事以外を優先する選択も、納得して選んだ道ならすべてが輝きにつながると私は思います。
4コマ革命#9は、ここまで。
次回以降も、4コマ漫画「はたらくわたし」を通じて、職場に潜むリアルな違和感と、その背景にある本質を考えていきます。

「4コマ革命」は、職場の“あるある”を起点に
その背後に潜む本質を描き出すコラムシリーズです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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