「転職したい」と口にしながら、本音では迷っていませんか?辞めることばかり考えて“今”を捨てていく働き方は、キャリアの停滞を招きます。4コマ漫画『そのうち辞めるつもり』を通して、転職の迷路から抜け出すヒントを考えます。
今回のテーマは「転職」と「辞める前提で働く意識」です。
転職市場が活発になる中、「そのうち辞めるつもり」「いつかは転職したい」という言葉をよく耳にします。最近では、“静かな退職(クワイエット・クィッティング)”という言葉も注目され、表向きは在籍しながら、心の中では「もうこの会社に期待していない」と距離を置く――そんな“辞めない退職”が、職場のあちこちで静かに広がっています。
4コマ漫画『そのうち辞めるつもり』では、現職への不満を口にしつつも行動できない姿を通して、キャリアの迷いや停滞を描いています。転職が“ゴール”ではなく、“手段”であるとすれば、私たちはどんな視点で「今」を生かせばいいのか。その問いを、一緒に考えていきましょう。
目次
- 「辞める前提」で働く人が増えている理由
- 4コマ漫画『そのうち辞めるつもり』
- <考察1>「辞めるつもり」が口癖になる人の心理
- <考察2>「辞める前提」を手放したときに見えてくるもの
- サンボンガワが読み解く「転職」とは
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1. 「辞める前提」で働く人が増えている理由
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かつて転職は「大きな決断」でしたが、いまや、より良い環境へ移ることは当たり前の選択肢になりました。一方で、「どうせ長くはいない」「とりあえず次が見つかるまで」など、“辞める前提”という意識が、気づかぬうちに潜在しています。
最近では、実際に辞めるわけではなく、心だけが会社から離れていく“静かな退職(クワイエット・クィッティング)”も見られます。仕事はこなすけれど、自分の成長や未来への期待を手放した状態。それは、離職とは違う形で、キャリアの停滞を深めてしまう危険をはらんでいます。
現職への不満を語りながら、実際には何も動かないまま時間が過ぎている…。このような状態が続くと、「辞める」ことを口にするだけで、自分の現状を変えたような錯覚に陥り、行動しないまま停滞してしまうのです。
“いつか辞める”という言葉の裏には、「今のままではいけない」という焦りと、「どう動けばいいかわからない」という迷いが同居しています。転職を前提にするよりも大切なのは、なぜ辞めたいのか、何を求めているのかという要因を明確にすること。そこを曖昧にしたままでは、次の職場でも同じ迷路をさまようことになるかもしれません。
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2. 4コマ漫画「そのうち辞めるつもり」
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3. <考察1>「辞めるつもり」が口癖になる人の心理
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漫画の中で、「うちの会社は古い」「そのうち辞めますよ」と繰り返す入社2年目の小田くん。
しかし、彼は会社に不満を抱きながらも、実際には行動に移していません。「辞める」と言いながら辞めない…いわゆる“辞める辞める詐欺”。これは単なる愚痴や脅しではなく、「現状に不満を持ちながらも、行動できない自分への苛立ち」の裏返しとも言えます。本人にとっては、一種の自己防衛です。
周囲に「辞めたい」とこぼすことで一時的に気が晴れても、根本的な問題は変わらず、この繰り返しが続くうちに、キャリアの舵取りを他人任せにしてしまいます。結果として、自分の軸が曖昧になり、「何のために働いているのか」が見えなくなっていくのです。
漫画の中で小田くんは「仕事は乗り換える時代」「耐えるのはナンセンス」「他にいくらでも会社はある」と語ります。これらの言葉の裏には、本気で何かを変えたいという覚悟ではなく、“現状を直視したくない気持ち”が透けて見えます。「本当は変わりたいけれど、どう動けばいいかわからない」――そんな停滞のサインにこそ、キャリアの本質的な課題が潜んでいるのです。
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4.<考察2>「辞める前提」を手放したときに見えてくるもの
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後半、サンボンガワがつぶやく「そのうち辞めるつもりで、何を得る!?」という鋭い一言。このセリフには、辞めるという未来を前提に働いている限り、今の仕事も人間関係も、自分の糧にはならないという現実が凝縮されています。
小田くんは「転職したい」と言いながらも、次に何をしたいのかが明確ではありません。この姿は、転職という行為が目的化し、キャリアの意味づけが失われている状態を象徴しています。本来、転職とは「逃げる」ことではなく「前進する」こと。
「いつか辞める」ではなく、「どう生きるか」。そのための選択肢のひとつが転職であり、今の職場で成長や貢献を重ねていくことも、同じくキャリアを前進させる手段です。このように、キャリアを“点”ではなく人生という“線”で捉える視点を取り戻すことで、転職は迷路ではなく、次につながる道へと変わっていくのではないでしょうか。
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5. サンボンガワが読み解く「転職」とは
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会社で過ごす時間は、人生の一部でありキャリアの一章。だからこそ、ここで何を学ぶか、何を積み重ねるかが、次の章の厚みを決めます。正直なところ、私も「辞めたい」と感じることはよくあります。そのたびに、現状のメリットやデメリットを並べ、天秤にかけて留まる…そんな思考はよく理解できます。しかし、「辞めたい」と思いながら何年も過ごしてしまうこと、その状態がまるで「耐えているキャリア」ではないかと考えたとき、私はそれがあまりにも勿体ないと感じるのです。
「隣の芝は青い」ともいいますが、実際にはどこに行っても課題はあり、完璧な職場など存在しません。それでも、いま目の前の仕事や人との関わりをどう活かすかによって、自分のキャリアの意味は大きく変わります。私の場合、「1年後にはこうなろう」「そのために今何をするか」――そんなふうに捉え直してみると、「ここでしか得られないもの」も見えてきました。
天秤にかけて進むか留まるかは人それぞれですが、キャリアは自分次第でもっと豊かにできるものだと、私は思うのです。
4コマ革命#10は、ここまで。
次回以降も、4コマ漫画「はたらくわたし」を通じて、職場に潜むリアルな違和感と、その背景にある本質を考えていきます。

「4コマ革命」は、職場の“あるある”を起点に
その背後に潜む本質を描き出すコラムシリーズです。
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企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
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