4コマ漫画で見る新入社員あるある

新入社員と“共に探る”育成のかたち“伝える”だけでは響かない時代の関わり方とは

新入社員の離職、その背景には育成のズレや関係性のすれ違いが潜んでいます。どれだけ丁寧に教えても、相手を“わかろうとする姿勢”がなければ信頼は育ちません。共感と対話を軸に、“共に探る”スタイルで関係性を築く育成こそ、今の時代に求められるアプローチです。

· 新入社員定着,人材育成・社員教育,コミュニケーションスキル,若手社員育成,離職防止

「新入社員をどう“育成”するか」 この時期、多くの現場や組織で繰り返されるテーマです。入社に合わせて研修やOJTの体制を整え、手厚くフォローする準備をしている企業も少なくありません。しかし、どれだけ丁寧な育成計画を描いても、相手のことを“わかろうとする姿勢”がなければ、関係性は深まりません。今の時代の育成とは、ただ知識やスキルを教えることではなく、一人ひとりが何を考え、どう在りたいのかを理解しようとする営みではないでしょうか。育成とは、手をかける”ことではなく、“心を寄せる”ことから始まる…そんな視点が、これからの育成のあり方を照らしていきます。

目次

■すれ違う職場と新入社員のリアル“空気”で伝わる職場の無意識

■育成現場に潜む “解釈のズレ”と“距離感”関係性をこじらせない受け取り方の工夫

  1. 「わかってもらえる」までの時間差
  2. 「遠慮」が「無関心」に見える
  3. 「期待」と「プレッシャー」の紙一重
  4. 「指導」と「支配」は紙一重

■どう関わる?〜“共に探る”育成の実践へ〜

■新入社員あるある4コマ漫画「求めたくせに求められてなかった」

すれ違う職場と新入社員のリアル
“空気”で伝わる職場の無意識

入社直後の新入社員にとって、会社は「未知の社会」です。パンフレットや説明会で見てきた“理想の姿”と、実際の職場の空気との間にあるギャップに戸惑いながら、彼らは職場の文化や関係性を慎重に観察しています。

「誰が、どこまで受け止めてくれるのか」

「自分の意見は、本当に歓迎されるのか」

仕事を覚える傍らで、新入社員は“ここで安心して働けるか”を静かに見極めているのです。その評価基準は、制度やマニュアルではありません。目の前の上司や先輩のまなざし・表情・リアクションといった、“日常の言動”こそが、彼らの安心や意欲に直結します。つまり、「この会社では、自分として存在していいのか?」という問いの答えを、日々の関わりの中から感じ取ろうとしているのです。
一方で、受け入れる側の上司や先輩は、「まずは基本を教えよう」「社会人としての土台をつくろう」と善意で関わっているつもりかもしれません。

「まずは言われたことをしっかりこなしてから」
「そのうち自分らしさは出せばいい」

このような、“先に型にハメる”前提が含まれてしまうと、新入社員は敏感にそれを“察して”しまいます。その空気は、上司が意図していなくても、「あなたのやり方はまだ要らない」「今は求めてない」といったメッセージとして伝わりかねません。本当は期待しているのに、そうは受け取られない空気。ここに、最初のすれ違いが生まれてしまうのです。

育成現場に潜む “解釈のズレ”と“距離感”

関係性をこじらせない受け取り方の工夫

① 「わかってもらえる」までの時間差

新入社員は、「できる限り仕事を早く覚え、評価された上で、自分のことを早く理解してもらいたい」と願い、受け入れる側は、「これから少しずつわかっていけばいい」と構える。この“時間感覚のズレ”が、双方の認識を大きくずらしてしまいます。新入社員は、自分の働きぶりや発言が、今この瞬間に「どう評価されているか」に敏感です。だからこそ、理解されない時間が長引くと、「見られている=試されている」「沈黙=否定されている」と解釈しがちです。上司は“今はまだ判断しない”つもりでも、反応のなさ=興味のなさと受け取られてしまうことも。

―関わりのヒント―
わからないことがあれば聞いてね」より、「どう感じてる?」とこちらから関わることで、“話してみようかな”と思える第一歩になり、信頼関係を築く土台になります。

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② 「遠慮」が「無関心」に見える

「今は忙しそう」「こんなことで聞くのは申し訳ない」そうした新入社員の気遣いからの“遠慮”が、周囲には「やる気がない」「きちんとホウレンソウができない」と感じさせるかもしれません。新入社員は、“慎重に動く”ことで迷惑をかけないように配慮しているつもりでも、受け入れ側から見れば、“やる気がない”ようにすら見えてしまう…。結果として、「自分から動かない=受け身だ」という評価にすり替わってしまうのです。遠慮の背景には、「嫌われたくない」「悪目立ちしたくない」「場の空気を壊したくない」という対人不安と配慮の心理があります。

―関わりのヒント―
“何も言わない=何も考えていない”ではなく、話しかけやすい雰囲気と、安心して声を出せる“受け止め力”が必要なのではないでしょうか。

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③ 「期待」と「プレッシャー」の紙一重

「期待してるよ」の一言は、良かれと思ってかけた言葉かもしれません。しかし、まだ関係性ができていない相手にとっては、“試されている”ように感じてしまうこともあります。たとえ言葉が前向きでも、表情やトーン、タイミングによっては「ちゃんとできるよね?」という圧にすり替わって伝わってしまうことも。特に、自己評価が定まっていない新人にとっては、期待の言葉が「自分には応えられないかもしれない」という不安を増幅させる材料となる可能性があります。

関わりのヒント
“期待してる”だけではなく、「どうなってくれたら嬉しいか」や「今のままでもいい部分」もセットで伝えることが、安心感につながります。
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④ 「指導」と「支配」は紙一重

「まずは型を覚えて」「うちのやり方でやってみて」 このスタンスは、一定の学びを得る上で必要なことかもしれません。しかしそれが、“正しさ”や“経験”を盾にした一方的な「型」の押し付けになってしまうと、新入社員は「自分の考え(創意工夫)は求められていない」「黙って従えということか」と感じてしまいます。大切なのは、型を教えることではなく、なぜその型なのかを共有すること。背景や目的が見えないまま“指示”だけが続くと、受け手には「支配されている」ように映ってしまうのです。

―関わりのヒント―
「このやり方にはこういう理由があるよ」と伝えることで、“教わる”から“納得して動く”へと変わっていきます。

どう関わる?

“共に探る”育成の実践へ

これからの育成に必要なのは、「型」を一方的に教え込むことではなく、“共に考え、引き出す”というスタンスです。関わり方の質が信頼を生み、信頼が学びや意欲の深さを支えます。つまり、育成の成否を分けるのは、“教え方”ではなく“関係性の質”。相手が「この人と(この会社で)一緒に働きたい」と思えるかどうかが、主体性やエンゲージメントに大きく影響します。さらに、変化の激しい今の社会では、育成そのものに「これが正解」という型を持ち続けることが難しくなっています。そんな時代に求められるのは、企業として「こうあってほしい」という想いと、個人として「こうありたい」という意思を、一方通行ではなく、“相互理解”と“相互尊重”を前提に対話で重ねていくこと。互いが掲げるビジョンに向かって関わり合い、相乗効果を生み出す関係性こそが、これからの育成の理想形です。

育成は、誰かを育て上げる「教える側と教えられる側」という固定的な関係ではなく、“共に育っていく”営みへとシフトしつつあります。相手の可能性に寄り添いながら、一緒に悩み、一緒に考え、共に育つ。問いかけ、耳を傾け、対話を重ねる。そんな積み重ねが、理解を深め、信頼を築き、行動を引き出していきます。

新入社員は、まだ見えないだけの“可能性のかたまり”。そして、新入社員もまた、組織の一員として、共に働く“対等なパートナー”です。上司と部下という関係にとらわれず、互いのまなざしを重ね合える育成を目指したいものです。

仕事あるある4コマ漫画「はたらくわたし」より

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