評価のための評価。面談のための面談。提出のための目標。本来、人事評価は社員の成長を支援し、組織の方向性を共有するための大切な仕組みのはずです。それなのに、なぜ人事評価の時期になると「またこの季節がやってきた……」という空気が流れてしまうのでしょうか。制度を設計した人事も、運用する管理職も、評価を受ける社員も、それぞれ真面目に取り組んでいます。
それでもいつの間にか、人事評価は「成長のための仕組み」ではなく、「期限までに回すための業務」となり、目標は自分ごとではなく提出物へ、面談は相互理解や成長支援の場ではなく、実施すること自体が目的になってしまうことがあります。当コラムでは、人事評価制度が形骸化してしまう背景と、本来の目的を取り戻すためのヒントについて考えていきます。
目次
- 頑張っているのに機能しない人事評価
- なぜ目標は「提出物」になってしまうのか
- 人事評価を「自分ごと」に変えるには
- 4コマ漫画はたらくわたし「追われ回してやらされ評価制度」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
1. 頑張っているのに機能しない人事評価
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人事評価制度がうまく機能しない要因としては、制度設計や評価基準の曖昧さ、管理職の評価スキルや面談スキルなど、さまざまな課題が挙げられます。そのため、多くの企業では評価制度の見直しや評価者研修の実施など、さまざまな改善活動が行われています。
しかし現場では、評価シートを提出した、目標設定面談を実施した、評価会議も終わった。にもかかわらず、社員にとって目標設定が「達成したい目標」ではなく、「提出すべき書類」になってしまってはいないでしょうか。
人事担当者は制度を整備し、管理職は通常業務の合間を縫って面談を実施する。決して誰かが手を抜いているわけではありません。むしろ、人事は制度運用に追われ、管理職は面談や評価に追われ、社員は目標設定や提出物への対応に追われています。それぞれが真面目に取り組んでいるからこそ、「社員の成長を支援する」という本来の目的よりも、「評価制度を回すこと」が優先されてしまうことも…。
そして、追われながら制度を回しているうちに、気づけば社員にとっては「やらされる評価」になってしまう。本来は手段であったはずの評価制度が目的となった時、「評価のための評価」「面談のための面談」といった状態が生まれやすくなるのです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2. なぜ目標は「提出物」になってしまうのか
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
人事評価制度において、多くの企業が目標設定を行っています。しかし、その目標は本当に社員自身が達成したいと思える目標になっているでしょうか。
評価シートを埋めるために目標を考える。
上司との面談までに目標を設定する。
評価項目に沿って目標を書き込む。
こうした流れの中では、目標設定そのものが目的になってしまい、本来の意味が薄れてしまうことがあります。もちろん、会社として目指す方向性や期待する役割を示すことは重要です。しかし、それが会社から与えられるだけの目標になってしまうと、社員にとっては「自分が実現したいこと」ではなく、「会社から求められていること」として受け取られやすくなります。
すると目標は、達成したいものではなく、提出するものになる。
面談は、成長について対話する場ではなく、設定した目標を確認する場になる。そして評価は、自分の成長を振り返る機会ではなく、結果を判定されるイベントになってしまいます。
目標が自分ごとにならない限り、人事評価もまた自分ごとにはなりません。だからこそ重要なのは、「どんな目標を設定するか」だけではなく、「なぜその目標に取り組むのか」を本人が納得できているかどうかなのです。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
3. 人事評価を「自分ごと」に変えるには
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
では、人事評価のやらされ感をなくすためには、どうすれば良いのでしょうか。評価制度そのものをなくすことでも、評価シートを減らすことでもありません。大切なのは、人事評価を「会社が社員を評価する仕組み」から、「会社と社員が共に成長を考える仕組み」へと捉え直すことです。
社員にとって重要なのは、「会社が何を求めているか」だけではありません。
それ以上に重要なのは、「自分はどうなりたいのか」が見えていることです。
人は、自分が目指したい未来とのつながりが見えた時に初めて、その目標を自分ごととして捉えられるようになります。逆に、自分のありたい姿が曖昧なままでは、どれだけ立派な目標を設定しても、「会社から与えられた目標」として受け取られやすくなります。例えば、「後輩育成」という目標があったとしても、将来マネジメントに挑戦したい人にとっては経験を積む機会になるかもしれません。一方で、専門性を高めたい人にとっては、人材育成や指導力を身につける機会として捉えられるかもしれません。同じ目標であっても、自分が目指す未来とのつながりが見えた瞬間、その目標は「提出物」から「行動指針」へと変わります。
会社には会社のありたい姿があります。
社員には社員のありたい姿があります。
人事評価が機能するかどうかは、そのどちらかを優先することではなく、
「その重なりを見つけられるかどうか」にかかっています。
評価制度は本来、人を管理するためのものではなく、人と組織の成長を支えるための仕組みです。だからこそ重要なのは、「どのように評価するか」だけではなく、「自分はどうなりたいのか」「会社はどこを目指しているのか」を対話し、その接点を見つけていくことではないでしょうか。制度を運用することが目的ではなく、人と組織の成長につなげることが目的。その原点に立ち返ることが、人事評価を「自分ごと」に変える第一歩なのかもしれません。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
4コマ漫画はたらくわたし「追われ回してやらされ評価制度」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――――
企画・編集:『SIMBAUNIVERSITY』編集部
―――――――――――――――――――――
『SIMBA UNIVERSITY』は、キャリアを進むすべての人のためのWebメディアです。キャリア支援に役立つ実践ガイド記事や導入事例、価値観診断ツールなど、現場に寄り添うコンテンツを通じて、キャリアの迷いや選択に向き合うヒントをお届けしています。
当社では、個人が描くキャリアの方向性と、組織のビジョンを重ね合わせるアプローチとして、「クロスキャリア・マネジメント」を提唱しています。また、社員一人ひとりが自分らしさを活かしながら、価値観や“ありたい姿”を言語化し、主体的にキャリアを描いていくためのキャリア開発プログラム、「じぶん戦略」もご提供しております。組織と個人が、ともに成長し合える関係づくりにご関心のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

